理由はそのうち考える

まずやってみよう

人工知能は人間を超えるかを読んだ

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AI関連知識習得のために

AI関連知識、とりわけディープラーニングを学習することを今年の目標においているにも関わらず今まで何もしてこなかったため、そろそろ何かせんとやばいと思って情報収集していると、入門にはこの本がいいと知ったので即購入した。感想を交えてまとめる。

ちなみにこの本、今(2020/08)ならセール中で、自分が買ったときよりも更に安く購入できる知っていたらもう少し後に買ったのに。  

人工知能とは何か

一口に人工知能と言っても、専門家でも様々に定義が分かれているほど実は複雑なものらしいことがわかった。確かに誰かに「人工知能とはなんですか」と問われると、どう説明するのがよいのか首を傾げてしまう。おそらくアニメやSF小説などに登場するキャラクターで例えてイメージを共有するに留まるだろう*1

また巷にはAI搭載なんちゃらという製品があふれているが、それにも色々なレベルがある。単なる制御プログラム、古典的なパズルや診断プログラム、機械学習を取り入れた人工知能ディープラーニングを取り入れた人工知能という具合に。色々なレベルでAIと謳うものだから、世間一般における認識はバラバラになっている。

人工知能の歴史

本書によると、人工知能の歴史は(2015年の段階で)60年ほどあり、その中で3回のAIブームがあったそうだ。「推論・探索」の第1次AIブーム(1950年代後半~1960年代)、「知識」の第2次AIブーム(1980年代)、そして今の「機械学習」の第3次AIブーム。特に今回はディープラーニングというブレークスルーによって、これまでにない大波となっている。

人工知能の難しさ

本書では人工知能の歴史がブームに沿って説明されており、第1次・第2次と熱が冷める瞬間があるのだが、特に知識を入れることの難しさについて印象が残った。例えば医療診断プログラムにおいて、あいまいな情報や特徴から的確な診断をするために必要となる情報は、人間であれば普通・常識として割と簡単にイメージできるが、コンピュータはそんなこと知らないのですべて定義としてインプットする必要がある。

簡単に想像できるように、一般常識をコンピュータが扱うためには膨大な知識が必要でとても難しく、知識獲得のボトルネックという。その例にフレーム問題・シンボルグラウンディング問題がある。フレーム問題は、あるタスクを実行するのに「関係のある知識だけを取り出してそれを使う」ことの難しさ。ロボットの例がとても面白い。シンボルグラウンディング問題はシンボル(記号)とそれを意味するものがグラウンド(結びつく)できない問題。シマウマを知らない人にシマウマ=シマのあるウマと説明すると、人間であれば本物のシマウマを見た瞬間に容易に認識できるがコンピュータだとそれができない。自分も職業柄プログラミングはするし、コンピュータは作ったとおりにしか動かないこともわかるので、この問題がとても難しいことであることもよくわかる。

現実の問題にコンピュータが立ち向かうためには、クリアしなければならない壁が高く立ちはだかっている。

救世主として現れたディープラーニング

第2次AIブームでの結論は「知識」を入れればそれっぽく振る舞えるようになるが、それには膨大な量のインプットが必要で終わることがないこと、根本的にはシンボルグラウンディング問題にあるように「意味」を扱うことの難しさだった。そこに光を指したのが機械学習という技術で、コンピュータプログラム自身が学習する仕組みだった。機械学習は、コンピュータが大量のデータを処理しながら判断基準を自動的に習得する。しかし機械学習にも弱点があって、その精度を上げるには人間が頭を使って考えるしかなかった(特徴量設計)*2

そこに現れたのがディープラーニングで、データをもとにコンピュータが自ら特徴量を作り出す。本書ではディープラーニング機械学習の違い、ディープラーニングがどのようにして特徴量を作り出すのかが説明されている。詳しくは本書を読んでみてほしい。ディープラーニングがなぜ"ディープ"なのかも読んで理解することができた。

シンギュラリティ

本書によるとシンギュラリティとは、"人工知能が自分の能力を超える人工知能を自ら生み出せるようになる時点を指す"とある。自分の認識もだいたい同じだが、人工知能が学習を続けた結果、意識(自我)を獲得する特異点のようなイメージもあった。本書ではシンギュラリティは起きるのか、起きるとしていくつかのパターンでこれを思考実験している。どれも興味深い。  

まとめ

少し前の本(2015年)だが、人工知能に対して抱く一般的なイメージと実際の距離感がわかった。ニュースや出来事から伝わる内容だけでは混乱・勘違いしがちな点を説明しており、また難しい話もあまりないので、人工知能について知識ゼロの人がイメージを掴むにはとても良い本だと思う。ただ個人的にはもう少し専門的なことが書かれていることを期待していた。隠れ層あたりの説明が唐突感があったので、多少難しくなっても仕組みを理解したかったのはある。まあでもいきなり難しい本を読んでもきっと途中で挫折していたと思うので、ステップアップのための一冊としては適切だった。

最近(2020/08)は仮面ライダーゼロワンや今やっているゲームのDetroit Become Humanなどで人工知能というかアンドロイド関連の話題が自分の周囲にたくさん取り巻いていて、そんな中で本書で現在(2015年)のポジションがわかり、そういう世界になるのはまだ先なんだなあと感慨にふけってしまった。

*1:タチコマとか

*2:特徴量とは機械学習の入力に使う変数のことで、何を選ぶかで予測精度が大きく変化する